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「Face To Face」NO.96「人との繋がりを大切に」

 高31回生 田中雅英

 鷹取中学卒

 剣道部 

 大阪大学文学部

 M&Iアート株式会社 常務取締役

 

 

 絵画のオークション。映画の中でしか見たことがない人が大多数では? 現在、美術品の売買と査定業務をしている田中さんは、サザビーズの窓口を担当したり、実際にオークショニアとして壇上に登ったりの経験を積んできた。その田中さんが最も大切にしているのは人との繋がり。絵画の世界の裏話と、田中さんの、日々の生活を豊かにする「人との繋がり」についてお話を伺いました。

 

―長田村ー

 田中さんは高31回生だが、なんと、田中さんの知る範囲だけでも、31回生同志で結婚したカップルが25組もいると言う。かく言う田中さん自身も、そのカップルの一つ。「31回生は、まるで血の濃い村のようですね」と田中さん。

 

 長田時代の思い出と言えば、剣道部の仲間たちとの交流に尽きると言う。「剣道の練習の前に、まずはバレーボールで遊ぶ。休みの日には自転車で集まっては、わあっとだれかの家を襲撃して上がりこむ。いつも仲間と一緒でとにかく毎日が楽しかった」

 

 大学時代はアングラ劇団の「幻視行」に所属。「幻視行」は唐十郎に影響を受けたアングラテント劇団で、大学敷地内にいきなりテントを張り公演する。そこに出現する突然の異空間。「大学側にすれば排除したい活動だったのでしょう。私たちがテントを張った場所に、大学が花壇を作る。私たちは、違う場所をみつけてまたテントを張る。また花壇ができる。そこで始めたのが緑化反対運動(笑)」

 

 就職したのは、当時「おいしい生活」のキャッチコピーで一世を風靡していた西武百貨店だった。なんとなく文化的なイメージがして選んだだけだったが、配属されたのが西武百貨店美術部。美術品の販売と、提携先のオークション会社サザビースの窓口を担当した。

「私はおふくろに言わせると『カンの強い子ども』だったそうですが、紙や鉛筆、粘土を持たせると一人で3時間でも遊んでいたとか。もともと美術は好きでずっと興味がありました」

 

 新入社員時代に、31回生の仲間4人で作った「ルンルンハウス」のことは忘れられない。

「当時、大阪近辺で働いていた4人でしょっちゅう飲んでいたのですが『南で飲むのはお金かかるなあ』と」。そこで、みんなで部屋を借り、そこを改装した。借りた部屋は二部屋とキッチン。飲む部屋と寝る部屋があればいい!ということで、一部屋は部屋全体の床を上げて、部屋全体をベッドに。もう一部屋は本箱を横にしてカウンターのあるBARになった。

 

 「ここはBARだから、飲むときは必ずネクタイ着用だな!」ということで、ゼネコンの現場で働いていた仲間は、帰宅時は作業着のジャンパー姿だが、帰宅したらジャンパーを脱いでワイシャツにきゅっとネクタイを締める。そんな冗談のようなノリを本気でやってしまう愉快な仲間たち。

 

 「ルンルンハウス」の仲間は、50代になっても結束は固かった。「仲間の一人が秋田で働いていましてね。秋田に出張があったので、31回生の掲示板に『重要!○月○日16時 秋田に新幹線で着 田中』とだけ書き込んだのです。秋田に単身赴任中の、その仲間に会おうと思ってね。駅に着いてびっくり、なんと、残りの二人も神戸と東京から秋田駅に来ていたんです。『重要って書いてあったら、そら来るやろ!』ってね!」

 

 4人の老後の計画では「奥さんに面倒をかけるわけにはいかん。『ルンケアハウス』を作ろう。ボケてないやつがボケたやつの面倒をみる。だからボケたモン勝ち!(笑)」。ということで、還暦目前の今も、友情とユーモアを本気で楽しむ心意気は健在だ。

 

―美術品の鑑定ー

 西武百貨店に勤めて13年目に阪神淡路大震災が勃発する。自分のスキルではただの一人も助けられないと悩んだ。妻子を残して東京に転職。「結局は同じ美術の仕事に就いたのですが」。画商が集まって作ったAJCオークションではセリ人であるオークショニアも担当。AJCオークションが解散後はM&Iアート株式会社に勤める。

 

オークショニアとして壇上に立つ田中さん

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 「美術評論家や学芸員に中には、美術品に値段をつけることを蛇蝎のごとく嫌う人もいます。一方で、だいたいの美術商は、美術品をお金としてしか見ていません。日本では、アカデミズムと経済のバランスが悪いのです。私はその両者の真ん中に立つことが自分の使命だと思っています」

 

 西武百貨店時代に、最もお世話になったお客さまに言われた。

 

「たとえば、ハワイでダイヤモンドヘッドを見る時、私はこれでどうやってお金を儲けようかと考えてしまう。だけど、田中さんなら、素直にその美しさについて説明するだろう?私に必要なのは、そういう感覚を持ち続ける人と語り合うことなんだ。私には絵を描く才能はない。その私が唯一芸術に参加できる方法は作品を買うことだ。そして何を買うべきか、的確にアドバイスするのが君の仕事なんだよ」

 

 当時、バブルになりかけの時代で、尊い美術品をお金の塊としか思わない業界に嫌気がさしていた田中さんにとって、目から鱗の言葉だったと振り返る。

 興味を持って調べていくと、お金と美術品の間には、大昔から切っても切れない関係があることが分かってきた。

 

「茶の湯の大成者である千利休が、堺の商人だったことは深く考察すべき問題です。また、ゴッホの作品は、生前にはたった一点しか売られませんでした。その時の売値は400フラン。これは当時の郵便配達夫の二ヶ月半の給料でした。全く無名の30才過ぎの画家の作品としては破格です。私は、ゴッホは絵が売れなかったのではなく売らなかったのだと確信しています」

 

「ピカソの人生をたどっていくと、彼が、マネーゲームのように巧みに自分の作品の値段をあげていく様子が分かります。また、ピカソ作品のオークションでの落札価格を年ごとにグラフにすると、世界経済の推移と見事に一致したりします」

 

 教養としての美術の話は珍しくないが、このような美術とお金にまつわる視点からの話ができる人は少なく、最近は講演を頼まれることも多い。

 

 「美術品の鑑定というのは、本来は真贋の鑑定を言うのですが、実は真贋の白黒をつけるのは我々の仕事ではありません。真贋については作家ごとに鑑定機関があり、我々がその部分にタッチすることは基本的にありません。我々が行うのは、あくまで価格の査定です。査定について最も大切なことは『いかに正確に価格をつけるか』ということ。安く買って高く売ればいいというものではないのです。常に適切な価格を言えなくてはいけないのですが、これが難しいのです」

 

「美術品の価格は常に流動しています。ある特定の画家に一人の強烈なコレクターが現れただけで価格は高騰します。反対に、だれかが収蔵品を大量に売り出せば、たちまち暴落します。それを見極めるために、我々は絶えず価格の推移を見守っているのです」

 

 現在、田中さんは外務省からの依頼で、各国にある大使館の作品の状態を鑑定、解説する仕事を委託されている。すでに400点以上の作品を解説している。「おかげで依頼者からの信頼度は抜群です(笑)」

 

 「今の友だちを大切に。必ず一生の友だちになるよ」田中さんから現役長田生へのアドバイスだ。(2020年4月 取材・文・写真 田中直美)

 

31回生の卒業30周年大同窓会で「天城越え」を熱演する田中さん。

男役と女役と一人二役でこなした。楽しませることが大好きなエンターテインメント

 

編集後記

 田中さんはNO88で登場いただいた田中規雄さん「ニュースの中の物語を探して」http://nagata-tokyo.jugem.jp/?eid=203の弟さんです。風貌は全く似ていません!(笑)でも、人の心の中にするっと入り込む技は兄弟共通かと感じました。「自称『人見知り』ですが、そう言うと、周りの人に全力で否定されます」と田中さん。田中さんは、現在も東京で単身赴任中だが、地元の人たちともすっかり打ち解け、お祭りのさいには主要メンバーとして当てにされ、皆から親戚の様に付き合ってもらっているとのこと。どこに行っても、いつでも、周りの人とユーモア溢れる時間を過ごす。それが田中さんの人生を豊かに彩っているように見えました。

 

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| comments(6)|
田中雅英 (2020/04/28 12:44 AM)
松下様
あなたのコメントで、「アートの力」と言う新しいテーマをいただいた気がします。アートが単なる鑑賞して束の間の快楽を得る慰み物ではなく、人々の真摯な願いの結晶であったり、時には世界を弾劾する主張であったりすることはあります。
たとえばラスコーの壁画は狩猟の成果の願いであり、縄文の土偶の全てに腹に傷を付けているのは、出産にかかわる祈りであったりします。
昨年観たシスティーナ礼拝堂のミケランジェロの天井画に、美だけではなく、彼の激しい「怒り」を感じたのも同じかも知れません。
私が携わってきたアートと経済だけでなく、アートが及ぼすいろんな力について考えなければなりませんね。
そのためにも、よいコメントをいただきました。
ありがとうございます。
田中雅英 (2020/04/27 5:05 PM)
コメントありがとうございます。
確かにアートの持ついろんな力が話題になっています。
アートに触れることが、どれだけビジネス能力の向上につながるかについての世界的な研究会が昨年日本で開催されたりしています。

お話をさせていただく機会があれば、喜んで参加します。
田中直美 (2020/04/27 4:29 PM)
松下さま

同じ田中ですが、記者の方の田中です!長田サロンで、いずれお話を聞ける機会を作ります。楽しみにお待ちくださいね。
松下綾子 (2020/04/27 2:34 PM)
36回生、後輩です。
先日、ドイツのモニカ文化大臣が「アート(アーティスト)は生命維持に不可欠な存在」と語られていましたが、コロナ禍の中、それを痛感しています。
「物事の見方を根底から覆す力があるアート」に永く携わっておられる田中さんとお会いして、お話を伺える日を心から願っています。(企画してくれないかな〜)
田中雅英 (2020/04/25 10:17 PM)
コメントありがとうございます。
同業者の方が先輩にいらっしゃることを今の今まで知りませんでした。
東京美術倶楽部は、私も交換会や鑑定依頼で月に何度も足を運ぶ場所。
是非とも当時のお話をお聞きしたく存じます。
喜好勝美 (2020/04/25 10:17 AM)
嘗て、東京美術倶楽部という美術界に籍を持った一回り上の先輩として、大変面白く拝見させていただきました。

また、ルンルンハウスが今も続いているのは人生で大きな宝物だと思いますので、是非、ボケないで、死ぬまで磨き、楽しんでください。

先輩風を吹かすつもりは全くないのですが、美術界という稀な共通点があったものですから、ちょっと話をしてみたくなりました。ご連絡を戴ければ幸甚です。